メニューをスキップして本文へリンク
トップページ連合会トピックス多職種による熱心な研究発表15題 殊勲賞は藤井縁さん(陸前高田市国保広田診療所看護師)

多職種による熱心な研究発表15題 殊勲賞は藤井縁さん(陸前高田市国保広田診療所看護師)

岩手県地域医療研究会「秋季集会」 (令和元年11月16日)

  • 保健・施設

殊勲賞の受賞を喜ぶ陸前高田市国保広田診療所看護師の藤井縁さんと所長の岩井直路先生

岩手県地域医療研究会は11月16日、国保会館で令和元年度「秋季集会」を開催した。集会には医師や歯科医師、看護師などの直診関係者のほか、保健活動に従事する市町村担当者約130人が出席。日頃研究を重ねた多職種による15 題の発表が行われ、発表後には三賞が表彰された。今回は受賞した三賞と努力賞2題、特別賞1題を紹介する。

冒頭、磯﨑一太会長は「本研究会は国保診療施設及び類似施設に勤務する医師及び歯科医師の会員の学術研鑽、相互協力を図り、地域住民の医療の確保等に寄与することを目的に設立されており、秋の集会では、医師だけではなく、看護師などのさまざまな立場の方から発表をいただき、ひとつのフロアで、みんなで議論することがこの会の伝統となっている。また、今回は例年の研究発表とは別枠で、東日本大震災に関する体験に基づいた発表をいただくこととしており、震災当時を振り返るとともに、復興に向けて決意を新たにしたい」とあいさつした。

殊勲賞
小さな町のがん看護ケア相談窓口の役割と可能性

陸前高田市国保広田診療所 看護師 藤井 縁

医療資源が十分とは言えない気仙医療圏の現状とその影響を受ける患者の想いから、診療所内に「がん看護ケア相談窓口」を設置した。
相手の気持ちを汲み取る中で「人生の中で大切にしていること」等を確認し、相談者本人が今後どのように行動したらよいか考えられるよう助言や提案をした。
当診療所の相談内容を集計したところ、1番が不安・精神面、2番が症状・副作用だった。また、相談に来た患者の状態は、ほとんどが退院している状態だった。
今回設置した相談窓口は相談者にとって気楽に行きやすく、些細な気掛かりを緊張なく、自分の言葉で相談しやすい環境であったと考える。
相談窓口の役割は、①傾聴②がん情報の提供と整理③調整である。医療資源の少ない地域でも、相談者の生活圏内で活動するケアマネジャーと、敷居が低く住民との距離感が近い町の診療所の相談窓口が密に連携することで、潜在する相談者にも速やかな支援ができ、相談者のQOLの向上につながる可能性があると考える。

敢闘賞
摂食機能訓練の標準化を検討して 
-誤嚥性肺炎患者の経口摂取への取り組みから-

国保葛巻病院 主任看護師 遠藤真由美

当院の入院患者の平均年齢は81.7歳。日常生活の援助が中心で高齢患者が多く、ほとんどが摂食嚥下障害を抱えている。
当院では、摂食・嚥下研究会を中心に、食べられる口を作ろうと、絶食中から口腔ケアを行い、誤嚥性肺炎などの合併症の予防に取り組んできた。
標準化した摂食嚥下訓練を開始するに当たり、アセスメント表を使用したこと、手順や訓練の方法を確認できる個別の訓練メニュー表を作成・活用したことは、経験年数に関わらず同じ視点での観察を可能とした。
また、退院の際には施設スタッフに食形態の変更だけではなく、安全な食事介助方法を伝えるため、実際に介助の場面を見学・体験してもらい、施設職員には誰が見ても分かるようビデオに介助場面を収めてもらい施設職員間で共有した。
摂食機能訓練の標準化が切れ目ないケアの継続につながり、経口摂取を可能とすることができたと考える。

技能賞
地域に密着した病院ではじめた病棟内デイケアの効果と学び

奥州市国保まごころ病院 看護師 菊地礼子

①離床の機会を増やし、生活リズムを調整することで夜間の良眠を促し、QOLの維持・向上を図る②他の患者とコミュニケーションの場を提供することで、入院生活の活性化を図る③ADL低下を予防することで、退院後の生活支援の一助となる—ことを目的にデイケアを開始した。
デイケアを行っていく中、「発語が増え表情が豊かになった」「体を動かすことにより自分で食事ができるようになった」「食事摂取量が増えた」「感謝と期待の言葉をいただいた」などの効果が得られたほか、スタッフの多くが患者の良い変化を感じ、今後もデイケアが必要と思っていることが分かった。
このことから、入院生活がベッドの上中心ではなく、早期離床が図られ、他者との交流を楽しみながら過ごせるデイケアは必要と考える。また、レクリエーションに取り組むことで1対1のリハビリでは見られない集団効果も見られ、意欲の向上、身体機能の維持・回復の一助となったと考える。

努力賞
Dual Energy CTの物質弁別処理で新鮮椎体骨折を描出する

奥州市総合水沢病院 診療放射線技師 高橋伸光

現在、新しいCT技術としてDual Energyという概念があり、従来のCT画像に加え、特定の物質を弁別した画像を表示することができる。
当院装置での解析手法を富山労災病院の野水敏行先生と共同で開発し、2017年にプロトコルを確立、画像の呼称をBone Bruise image(以下、BBIという。)とした。この技術を骨関節領域の臨床に応用した。
この結果、BBI併用画像診断により入院期間が有意に短縮した。
BBIを含めたCT検査は検査時間の短さから受診日当日の検査が許容される。MRIとBBIでは確定診断までに要する時間が異なり、即日診断が可能なBBIは治療開始を早めることにつながった。患者が装具を装着し離床する期日が早くなり、入院期間が短縮したと考えられる。
椎体骨折等はADLの低下や生存率の低下が報告されており、BBIによる早期診断がそれらを防ぐと期待している。新鮮骨折のみを描出し、確定診断に使用できる可能性があるほか、MRIが禁忌の患者にとって選択肢のひとつと成り得る臨床的に有用な画像技術と考える。

努力賞
高血圧症の減塩意識調査 -岩手県脳卒中ワースト1から考える-

奥州市国保前沢診療所 看護師 岩渕陽子 

岩手県は2018年の全国脳卒中死亡率ワースト1となり、全国平均と比較して平均寿命、健康寿命ともに短いという結果が出た。
脳卒中の原因として主に挙げられるのが高血圧症であり、その治療において減塩が特に重要である。そこで当診療所の高血圧症患者を対象に3つの方法で塩分摂取量の測定と減塩に対する意識調査アンケートを行った。
この結果、患者の減塩に対する意識は塩分摂取量の数値とは必ずしも一致しないことが分かった。また、塩分摂取量を数値化して伝えることは、患者の減塩に対する動機付けとなり、食習慣を見直すきっかけとなった。
今回の研究結果を生かし、高血圧症患者の治療に重要な減塩を継続管理し、脳卒中などの合併症予防につなげていきたい。

特別賞
3.11東日本大震災の被災状況と診療所復旧 
-国保診療施設として-

大船渡市国保歯科診療所 所長 熊谷優志

7月に開催された岩手県地域医療研究会「歯科研修会」は、昭和59年から始まり令和元年で36回目となった。大船渡市で16年ぶり2度目の開催となったが、この間の大きな出来事として東日本大震災大津波が大船渡市を襲った。
娘が小学校入学を控えていたのが震災の春だった。地元の小学校は入学式を着物で行っていたが、この年だけは着物ではなかった。
中学校では震災の翌日に卒業式を控えていたが、体育館が避難所となったため、卒業生たちは震災から約一週間後に教室で卒業式を行った。卒業生たちはそれぞれができる服装で出席。保護者や来賓もいない中、卒業証書の授与が行われた。
式が終わり、避難所の体育館に支援物資を積んだトラックが来ると、この卒業生たちは自主的にトラックまで駆け寄り、支援物資を体育館に運んでいた。
心に沁みついている出来事であり、思い返しても胸が熱くなる。
我々の診療所は津波被害を免れたが、新築して1年の建物が大きく壊れ、診療できない状態となった。岡山大学歯学部をはじめ、全国からたくさんの支援をいただき、改めて感謝の気持ちを伝えたい。

関連ファイルダウンロード 

新着記事

通信エラーが発生しました。しばらく時間をおいてから再度お試しください。

ページ終端です