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トップページ連合会トピックス職種を超えた多彩な研究発表12題 殊勲賞は竹澤千尋さん(町立西和賀さわうち病院クラーク)

職種を超えた多彩な研究発表12題 殊勲賞は竹澤千尋さん(町立西和賀さわうち病院クラーク)

岩手県地域医療研究会「秋季集会」 (令和4年10月29日)

  • 保健・施設
町立西和賀さわうち病院の参加者〈殊勲賞の竹澤千尋さん(左から3人目)と、特別賞の角田直子先生(中央)〉

岩手県地域医療研究会(会長・磯﨑一太洋野町国保種市病院長)は10月29日、国保会館においてWebと参集の併用形式で令和4年度「秋季集会」を開催した。集会には医師や歯科医師、看護師などの国保診療施設関係者のほか、保健活動に従事する市町村職員など約90人が出席。日頃研究を重ねた多職種による12題の発表が行われ、発表後には殊勲賞、敢闘賞、技能賞の三賞と努力賞(2題)、特別賞が授与された。今回は受賞者の発表を紹介する。

あいさつする岩手県地域医療研究会 磯﨑一太 会長

冒頭、磯﨑一太会長は「本研究会は国保診療施設及び類似施設に勤務する医師及び歯科医師の会員の学術研鑽、相互協力を図り、地域住民の医療の確保等に寄与することを目的に設立されており、秋の集会では、医師だけではなく、看護師などのさまざまな立場の方から発表をいただき、相互研究を重ねる場となっている。また、令和6年度の第64回全国国保地域医療学会が本県で開催されることとなった。開催を盛り上げるためにも、皆様にはぜひ多くの研究発表と開催運営へのご協力についてもお願いしたい」とあいさつした。

殊勲賞
「私たち、笑顔いっぱい全力で、ささえまーす」
町立西和賀さわうち病院 クラーク 竹澤千尋

殊勲賞を受賞した町立西和賀さわうち病院 クラーク 竹澤千尋 さん

当院の医師事務作業補助者(以下「クラーク」という)は、平成10年に外来事務補助者として採用され、その後は平成28年に32時間の研修を終了し、「医師事務作業補助者加算1」を取得、医師の負担軽減に努めている。
クラークの業務内容は、紹介状の作成補助、退院患者のサマリーの代行作成、学会や研究・論文のための資料作成などさまざまである。内服リストや処方の注意点のマニュアル作成では、医師の確認作業や薬剤師への問い合わせ負担の軽減に貢献し、診療サポート資料作成では、患者指導の際の利便性や医療安全、指導効果の向上につながっている。ほかにも、救急患者来院時のサポートでは、心肺蘇生時の心電図波形確認や昇圧剤投与のディクテーションなどを行っている。糖尿病患者をリスト化し、眼科への予約依頼書作成を行ったことで、眼科受診率が増加した。骨粗鬆症の患者への検査スケジュール管理や代行オーダーを行うことで、骨密度検査数も増加し、治療に際して必要な歯科との連携も行っている。
今後も、明るく、元気に、笑顔で、多忙な医師が、より患者さんとの時間を作れるように縁の下の支えとなり、全力でサポートしたい。

敢闘賞
「日常の内科診療におけるサルコペニアの評価と介入
   -第一報:評価方法を検討する経過における問題点-」
奥州市国保前沢診療所 主任診療放射線技師 千葉裕介

敢闘賞を受賞した奥州市国保前沢診療所 主任診療放射線技師 千葉裕介 さん

サルコペニアは様々な疾患と関係するため、調査すべき対象者は多いが、一般診療の対象者を75才以上に絞り、スクリーニングでSARC-Fの合計が4点以上のサルコペニア疑い患者には握力測定のみを実施。また骨密度測定者にはスクリーニングから評価までの全項目を実施して、問診時点でチャートが終了する場合と判定までの全検査を行う2パターンでテスト運用した。
テスト運用で2つの問題が判明した。1つ目はSARC-Fの評価は難しく、解釈や判断に相違が出るため、回答の選択肢を明確化した結果、陽性疑いの割合が日本人のサルコペニアの割合に近似した。2つ目は、サルコペニアの問診や評価は、SARC-Fの問診だけで5分、全項目では10分程度かかり、看護師の負担が増加したが、骨密度検査時の放射線技師による問診とすることで、診察に影響が出ない範囲内でこなすことができた。
今後はスクリーニングの精度を高めながら診療へと移行し、多職種と連携し予防医療に貢献できるような介入をしていきたい。

技能賞
「入院から在宅へ -一人一人の「食べる」を支えて-」
奥州市国保まごころ病院 看護師 小岩久美子

技能賞を受賞した奥州市国保まごころ病院看護師 小岩久美子 さん

当院の令和3年度再入院率は、7.2%、そのうち呼吸器感染症での再入院が31%を占めていたため、看護師による摂食嚥下・口腔ケアチームの活動に、多職種からの協力を得て、退院指導につなげ、在宅や施設に戻っても「口から食べる」を継続するために取り組んだ。
摂食嚥下機能低下がみられる患者に対し、多職種で連携し、食事形態やポジショニングの工夫、口腔内環境の改善を行った。退院指導では、食事の様子を見学してもらい、ポジショニングの写真を用いて、要点を説明の上、写真を退院時に渡し、自宅や施設でも使用できるように、情報共有した。
KTバランスチャートの比較結果から、退院後、家族や施設職員、訪問看護師の関わりが適切に行われ、写真を活用していたことで、在宅や施設でも統一したケアにつなげることができ、安全な食事摂取に有効であった。しかし、OAG評価では悪化もみられ退院指導の改善が必要と考える。
今後も、患者や家族の思いに寄り添い、その人らしく暮らしていけるように退院後の生活をイメージした退院指導を続け、患者や家族を入院から退院後までサポートしていきたい。

努力賞
「新型コロナウイルス感染病床 入院患者受け入れの経過」
洋野町国保種市病院 看護師 廻立良子

努力賞を受賞した洋野町国保種市病院看護師 廻立良子 さん

新型コロナウイルスは、令和2年11月、当町でも初の感染者が確認された。当院では、令和4年2月から入院患者の受け入れを開始し、現在まで延べ53人の患者を受け入れた。患者受け入れに当たり、さまざまな問題点が見えてきたことから、当院の対応を報告する。
問題点1「ゾーニング」では、病棟の汚染区域と清潔区域との境界線を床に色テープで表示した。また、パーテーションで区切った上で、導線を矢印で表示して交差しないようにした。問題点2「転倒・転落等の危険」では、入院時、転倒・転落アセスメントシートによる危険予測を行い、ラウンド回数を増やした。問題点3「担当看護師の汚染区域滞在時間の長時間化」では、日常業務を見直し、患者受け入れにあたり、清掃・清潔援助・PPEの簡略化を行った。
当院のように感染症患者の隔離管理が困難な構造であっても、感染症制御の3原則を守り、忠実に対策をすれば、感染を予防でき、患者と自分たちを守ることができる。
業務を簡略化し、負担の軽減に努め、また不安やストレスなど、自分たちの心も守る具体的な対策が今後の課題である。

努力賞
「車椅子座位時の褥瘡予防 
   -統一した予防対策を行うために-」
国保葛巻病院 主任看護師 森子幸恵 

努力賞を受賞した国保葛巻病院主任看護師 森子幸恵 さん

葛巻町の高齢化率は49%で、入院患者の平均年齢は84歳、認知症によるせん妄や昼夜逆転、加齢による身体的機能低下を予防する目的で積極的に離床を進めている。
令和2年度褥瘡発生8例中3例が、車椅子座位が要因と考えられた。車椅子座位時の体圧分散クッション使用による体圧値の比較と褥瘡予防対策の実施について、職員に意識調査を行った結果を報告する。
日本褥瘡学会では、座位の場合、体圧の目安の指標を70mmhg以下としており、体圧分散クッションを使用しない場合の体圧が70mmhg以下の患者は5人、70mmhg以上は5人、体圧分散クッションを使用した場合、10人すべて体圧値が低下した。
車椅子座位時の褥瘡予防対策について、病棟勤務スタッフ・看護補助員対象に実技を交えた勉強会を行い、体圧分散クッションの使用や座位時間等に配慮する職員が増え、勉強会後の車椅子使用による褥瘡発生はゼロとなっている。
体圧分散クッションの使用は車椅子座位時の体圧の低下に有効であり、体圧を可視化し勉強会を開催することで、褥瘡予防への意識が高まり質の高いケアの実践につながった。

特別賞
「西和賀さわうち病院におけるKTバランスチャートを用いた摂食嚥下機能評価の取り組み」
町立西和賀さわうち病院 歯科医長 角田直子

特別賞を受賞した町立西和賀さわうち病院 角田直子 歯科医長

今回の演題発表を行うにあたり、事前に国保診療所にアンケートを実施した。回答いただいた22施設のうち、摂食嚥下機能評価を行っているのは6施設で、そのうちKTバランスチャート(以下、KTBCとする)を使用している施設は、回収した時点では当院のみであった。嚥下スクリーニング検査のほかに嚥下造影を使用している施設は1施設であった。
当院では2021年からKTBCを摂食嚥下機能の評価として用い、多職種で評価し、共有している。KTBCは13個の項目をそれぞれ5段階で評価し、レーダーチャートで全体のバランスを評価する。
KTBCを使用し始めてから摂食嚥下スクリーニング対象になったのは24人で、訓練対象になったのは10人、訓練断念は0人、変化なしが3人、食形態等改善は7人であった。
KTBCは摂食嚥下機能に係る多くの因子の評価が数値化され、包括的に可視化できることから有用であった。また、それぞれの因子の改善を担当する各職種の役割分担が明らかとなり、チーム医療推進の上でもメリットがある。
今回は嚥下内視鏡を試験的に導入したことで、今まで頸部聴診で盲目的に評価していた部分を判断することが可能となった。嚥下内視鏡では咀嚼・送り込み・嚥下の瞬間は確認できないため、今後は嚥下造影なども取り入れていく必要がある。

「秋季集会」の様子

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